ネパール国カトマンズとネパール王室との関連

ネパール国の首都カトマンズの観光を満喫には、その歴史的・宗教的な背景を知っておくと、いっそう楽しむことができます。

カトマンズの観光については、こちらの記事（出張者が語る　ネパール国カトマンズの観光・レストラン）をご覧ください。

ネパール王室の起源とカトマンズの成立

ネパール王室の起源は、マッラ王朝の成立に遡ります。

12世紀に、マッラ王朝の創始者であるアリ・マッラは、カトマンズ渓谷を支配し、その後のネパール統一の礎を築きました。その後、カトマンズを中心にネパールの各地域を統一しました。

マッラ王朝は、カトマンズをネパールの首都として発展させ、王宮や寺院の建設を推進しました。特に、パタンやバクタプルなどの歴史的な都市は、マッラ王朝の支配下で繁栄し、文化や芸術の中心地となりました。15世紀以降、マッラ王朝はバクタブール・マッラ朝、カトマンズ・マッラ朝、パタン・マッラ朝の3つに分裂します。

18世紀になると、ネパール王国の前身となるゴルカ王国が、ネパールを統一し、勢力を拡大します。

カトマンズの創設と王室の関与

カトマンズは、マッラ王朝によって創設された古都です。この美しい渓谷は王室によって保護され、支援されてきました。王室の支配はカトマンズの発展に大きな影響を与えました。

王室はカトマンズの美しい景観を形成するために多くの建築プロジェクトを推進しました。パタン・ダルバール広場やバクタプル・ダルバール広場などの建造物は、王室の寄与の結晶と言えます。

政治的転換期と王室の地位

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ネパールでは政治的な転換期が訪れました。これはネパール共和国の成立に至るまでの重要な過程であり、ネパール王室の地位にも大きな影響を与えました。

19世紀後半、ネパール王国はイギリス帝国との軋轢が増え、外交的な圧力を受けました。イギリス帝国との戦争（グルカ戦争）に敗れたネパール王国は、イギリスとの講和条約を締結せざるを得なくなりました。この講和条約により、ネパール王国は外交政策の一部をイギリスに委任することとなり、イギリスの保護国になりました。

1951年、ネパール王朝による統治が終焉し、立憲君主制が導入されました。その後、1990年には民主化運動により議会制民主主義が復活し、国王の権力は大幅に制限されました。

2008年、ネパール王国はネパール共和国として再編され、国王制度は廃止されました。これにより、ネパール王室は政治的な権力を失い、代わりに共和制の下で象徴的な地位を与えられることとなりました。

現代のカトマンズと王室の影響

2000年代以降の現代のカトマンズは、民主化運動や政治的変化の影響を受けながらも、ネパール王室の遺産を保持し続けています。特に、2000年代初頭に起こった民主化運動は、カトマンズとネパール全体の政治的景観に大きな影響を与えました。

2000年代初頭、ネパールでは人々の不満が高まり、王室に対する不満や民主化への要求が高まりました。2006年、政府とネパール共産党（毛沢東主義派）との間で和平協定が締結され、王室の権力が制限されることとなりました。

王室は象徴的な地位に置かれ、政治的な影響力は大幅に減少しました。これにより、王室は以前よりも民主化されたネパールの政治体制に適応する必要がありました。

カトマンズの社会と文化は、王室の変化と共に変化しました。民主化運動により、市民の権利と自由が尊重されるようになり、カトマンズの市民は政治への参加や表現の自由を享受するようになりました。また、カトマンズの文化的シーンも活気を帯び、新たな芸術や文化の表現が生まれました。

また、民主化運動や政治的変化は、カトマンズの観光業にも影響を与えました。政治的安定が求められる中、観光業は一時的に停滞した時期もありましたが、その後は徐々に回復し、カトマンズはネパールの観光の中心地として再び栄えています。王室の歴史的な遺産は、カトマンズを訪れる観光客にとって重要な魅力の一つとなっています。

このように、2000年代以降の民主化運動は、カトマンズの社会と政治に大きな影響を与え、王室の地位とネパールの政治的景観を変革しました。しかし、王室の歴史的な遺産は今なおカトマンズの文化と観光業に影響を与え続けています。

カトマンズの宗教的影響

カトマンズは、ネパールの宗教的な中心地の一つであり、さまざまな宗教や信仰が共存しています。ヒンドゥー教、仏教、イスラム教など、さまざまな宗教の信者がカトマンズに暮らし、祈りを捧げています。

そのため、カトマンズの街並みは、宗教的な寺院や神殿、モスクなどが点在し、宗教的な雰囲気が漂っています。

1. パシュパティナート寺院

カトマンズにあるパシュパティナート寺院は、ネパール最大のヒンドゥー教寺院の一つであり、シバ神を祀っています。この寺院はヒンドゥー教徒の聖地として知られ、信者たちが巡礼に訪れ、祈りを捧げます。特にマハ・シヴァラートリの祭りの時には、多くの信者が寺院を訪れ、神聖な儀式を行います。

3. スワヤンブナート寺院

スワヤンブナート寺院は、カトマンズの丘の上に位置し、ネパール仏教の重要な寺院の一つです。この寺院は、「知恵の寺院」としても知られ、その周囲には仏教の僧侶や信者が多く集まり、瞑想や祈りを行います。また、この寺院からはカトマンズの街並みを一望することができ、観光客にも人気のスポットです。

3. カトマンズのイスラム教コミュニティ

カトマンズにはイスラム教徒のコミュニティも存在し、数多くのモスクが市内に建っています。特に、モスク・ジャーミア・マスジドは、カトマンズで最も古いモスクの一つであり、イスラム教徒の信者が集まり、礼拝を行います。イスラム教徒の祭りや行事の際には、モスク周辺が賑やかになり、地域のコミュニティの結束を感じることができます。

4. 宗教的な祭りと行事

カトマンズでは、さまざまな宗教的な祭りや行事が定期的に行われています。例えば、ヒンドゥー教のディワリやダーシャイン、仏教の仏誕節などがあり、これらの祭りは市内外の人々にとって重要な行事となっています。これらの祭りや行事は、カトマンズの宗教的多様性と文化的豊かさを象徴しています。

カトマンズは、さまざまな宗教や信仰が共存する都市として、宗教的な中心地としての重要性を保ちながら、その多様性と豊かな文化を残しています。

結論

ネパール王室とカトマンズの関係は、ネパールの歴史と文化の中で不可分のものです。

王室の支援と影響によって、カトマンズは美しい文化的景観を創り出し、その遺産は今日のカトマンズ市民や世界中の訪問者に引き継がれています。